逃れられない「イト」

朝食を終えた彼は長い階段を上り、自室へと戻る。自室は3DK。奥の純白のクローゼットには、彼の私服が沢山置いてある。タンスにカラーボックス、白いローブ、かつて通っていた魔法学園の制服、茶色のロングコートなど、長袖で不思議な衣装だらけだ。
彼は一番手前の突っ張り棒に掛けてある、黒いローブを取り出す。ここにもやはり薔薇の刺繍が施されてあった。



「では言ってくるよ」


玄関では、送り出しに集まったメイドたちが彼を見つめる。その中から、いそいそ出て来るのは小さな男の子だった。


「おにーちゃん、いこー」

「あぁ。では」


男の子を抱え、大きなドアを開ける。






















─────これがいつもの日々であった。