逃れられない「イト」

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血が全て流し終わったとき、浴室へと繋がる洗面所のドアが開かれる音がした。背筋がゾクゾクする。いま誰かに会ってしまえば、また血を浴びることになってしまいそうになる。柊に見られてしまったいま、今日は裁きを掛けたくない・・・。




















「誰だ?」


















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誰もいないのだろうか。怖い。ドアを開けたら襲ってくるかもしれない。悟られたのだろうか。だとしても、何故俺だと分かったのだろうか。
俺が殺したメイドの1人は、他のメイドにとっても嫌な存在だった筈だ。正直俺も嫌だった。俺が何かするたびに色々言ってくる。昨日の朝だって、待ち構えていたかのように階段下にいた。彼奴は俺の執事でもないのに、しつこい蚊のように纏わりついていた。














「誰なんだ。答えろ」


俺はこの館の主人でもある。もしメイドだとしたら必ず返事が来るはずだ。
だが。







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静まり返ったままだった。

















カチャリ・・・─────────



















静かに閉じられたドアの音が、物凄く不気味に感じられた。