「お疲れ!」

閉店作業が終わり、百貨店から出たところで平井主任に呼び止められた。
38歳妻子持ち。今年の春に千葉の支店から転勤してきた、メガネの似合う私の上司。

『お疲れさまです』

「今、帰り? これからちょっと付き合ってくれない?」

ん?

「俺の奥さん、昨日から実家帰ってるんだ。夜飯、ひとりじゃなんだから、付き合ってくれるとうれしいんだけど」

『そんなことなら もちろん OKです!』

話しやすくて 頼りがいがあって
的確な指示で 確実に売り上げを伸ばしてきた主任は、来年には横浜の本店に転勤になるんじゃないか、って。
もっぱらの噂。