遠くから聞こえる吹奏楽の音。

窓から差し込む夕日が、机を薄く橙色に染める。

「ねぇ蒼緒(アオ)」

私は、前を向く背中に話しかける。

「ん?」

彼が振り向く。

と、吹奏楽の音が止んだ。
合奏が終わったのだろうか。

「別れない?」

しん、と静まり返った教室に私は声を落とした。


「…え?」

彼がぽかんと口を開ける。

するとまた楽器の音が聞こえた。

まだ終わってなかったんだ、なんてことを考えながら彼を見つめる。


「私達、別れない?」