〜高杉side〜

ある日、俺はとんでもねぇ拾いモンをしてしまった。
榎本美紅とか名乗る未来から来たと言う女だ。
本来なら信憑性も無いし、相手をするのも面倒だからそのまま去ってるはずだった。
だが、俺が刀を抜いて脅してまでそばに置いた。
なぜ俺がそうしたのか、自分でも驚いた。

「…察しが早くて助かります…。」

察しが早い?
馬鹿言ってんじゃねーよ。
俺だってそんな話、これっぽっちも信じられるとは思えねぇ。
…ただ、その話をしている時の美紅の表情が柄にもなく綺麗だと思ってしまった。
…拠点に連れ帰った時も、坂本の野郎とずいぶんと仲良さげに話しているのを見た。

「ね、龍馬さん!龍馬さんのこと龍馬兄って呼んでいい?なんかお兄ちゃんみたいだから!」
「ワシが美紅の兄貴役か?おん!構わんぜよ!…っと、また出てしもうたのう!あっはっはっ!」
「ちょっと!使い分けしてよー?」

…苛つく。根拠は無いが苛つく。
さっきから煙管を噛んで抑えているが、あの2人が話しているところを見ると無性に腹が立つ。
…何故だ?
話ができないから?……違う。

盛り上がった空気が嫌いだから?……違う。

…美紅を自分の物にしたいから?

この考えが頭をよぎった瞬間、すべての辻褄が合ったような気がした。
……そうか、俺は美紅を自分の物にしたかったのか。
…そう、自分“だけ”の物に。
そう思うと自然と笑みがこぼれた。
…しかし、その笑みはどす黒い感情に溺れた、歪んだ笑みだった。