その日、私は憧れの先輩に呼び出され、屋上まで来ていた。



(斑鳩先輩…一体何の用事かなあ…?)



斑鳩 段三郎(いかるが だんざぶろう)先輩はこの学校の人気の的。



男女分け隔てなく優しく接してくれる、まさに完璧な高校生だ。



しかも外見もカッコよくて、すらりとした長身に艶やかに光る夜の空のような黒髪に、無限に広がる宇宙を切り取ったような黒く輝く瞳に見惚れない人はいなかった。



そんな段三郎先輩と私は同じ委員会に所属していて、よく話したりする仲だった。



先輩の美貌と、ふとした隙に見せる春の陽気のような温かな笑みを見ると、どんな気持ちも立ち所に晴れてしまうのだ。



いつしか、私は先輩のことを好きになっていた。



だから今日呼び出された時はびっくりして、しばらく動けなかった。



(私、先輩に何かしたかなあ。何もしてないと思うんだけど…)



複雑にこんがらがる思考のまま、屋上の扉を開けた。