ーside羽晴ー

今日は診察の日。


生まれつき身体が弱い私は週に1回ここから近い病院に通院している。


身体が弱い原因は、喘息だから。


それにしても…

大学病院はやっぱり苦手だ。


今日はテストだったし、昨日はあまり寝てないから少し寝ようかな…。


ソファーに座った途端に眠気が私を襲い気付いたら眠りに入っていた。


「はるちゃん。」


身体を揺すられて私は目が覚めた。


「こんな所で眠ってるなんて珍しいね。具合悪い?」


私は首を横に振った。


「よかった。じゃあ、中に入ろうか。」

笑顔でその医者は私を診察室へ促した。



この人は、昔から私を診てくれているけど未だに1度たりとも話したことがない。

たとえ、医者だとしても大人に優しくされることが1番嫌い。

理由はそれだけ。


中に入ると、見知らぬ若い医者がいた。


部屋、間違えたのかな。


部屋から出ようとした私を、佐伯先生は止めた。


その手を振り払った私を見たその新しい医者は驚いていた。


「はるちゃん、聞いて?この人にこれからはるちゃんの担当医をお願いしようと思って。」


「え?」


「山城蒼です。よろしくねはるちゃん。」


いきなりはるちゃんって…

馴れ馴れしい。


私は、いつも通りにこの医者の言葉に返事を返さなかった。


「はるちゃん、色んなことがあって大人のことを信用出来ない事は分かる。でもな?自分の殻に閉じこもってると、はるちゃん自身を苦しめていくと思うよ?だから、苦しくなったり辛かったらいつでも言って。」


「分かる?あなたに何が分かるんですか?」


気づいたら、私はそう言葉にしていた。


「はるちゃん、落ち着いて。とりあえず座って。」


「私…帰ります。」


早くこんな医者から逃げたくて私の足取りは早まっていた。

「はる!」


あまりにも力強い声で、後ろを振り向かされた。

「何?まだ何かあるの?」


私に話しかけたのはさっきの医者だった。


「これ。」


「何これ。」


「名刺の後ろ見て。」


言われたとおり名刺の後ろを見てみると、おそらくこの医者の携帯番号だった。


「1人で抱え込むな。何かあったら俺に頼ってほしい。」



「放っておいて!」


「まぁ、もらってってよ。ねっ?」


何言われても笑顔でいるこの医者がよく分からない。