けんの元に赤紙が届いたのはその日の夜。
次の日には、兵士となって沖縄の地をふみしめていた。
私はそんな事も知らずに、昨日の崖でけんを待ち続けた。
「遅いなぁ……」
そう言ってしゃがむと、隣には一つのきれいな花が咲いていた。
「きれいだね。お前」
そう花に話しかけると
「かよちゃん!!何してんの?!」
そう言ったのは、けんのお母さん。
「けん、待ってるんです。」
笑顔で言うと、みるみるけんのお母さんの目に涙がたまり、
「けんね…………
……兵隊さんに、なったの。」
そう言ったおばさんがだんだんぼやけて見えて、
私の頭は真っ白になった。
