そんなこと、考えても仕方ない。
授業は相変わらず耳に入って来なかった。
私はそれから紗英のことを考えた。


もし自分が紗英の立場だったら…?ー
想像してるだけなのに、どうしようもなく辛い。


ー…あきらめよう。


やっぱり諦めよう。佐倉くんのことが大好き、すごくすごく大好き。でも、紗英のことはそれ以上に、大切な友達だと思ってる。


初めての気持ちに、浮かれて周りが見えなっていた。


帰りの会が終わるといつもの帰り道。私はいつも一人で帰宅していた。


「よう。」


「…わあっ!」


どうして?どうして佐倉くんがここに?


「…何でいるの?」


「恭弥にこれ届けに行こうとしてた。」


恭弥くん。田辺恭弥くんは一言で言うと…ヤンキー?ううん、それは言いすぎたかも。でも、クラスで目立つ子で、穏やかな佐倉くんとは正反対にいるような子なのに、二人はなぜか仲が良かった。


「ああ、お手紙係か!田辺くん、今日休んでたもんね。」


「そう。俺らいつも別のルートで帰ってるんだけど、恭弥ん家はこの道から行った方が早いんだ。」


「そうなんだぁ、びっくりした。いつも帰りに会うことなかったから。」


「宮野ん家この辺なの?」


「うん、公園のすぐ近く!」


「まじ!じゃあ俺ん家からも近いんじゃない?」


「ほんとっ?」


家が近い。それだけのこと。それだけのことが、こんなに嬉しいなんて…


「じゃあ恭弥ん家こっちだから。」


「ああ、うん、バイバイ…!」


あっという間にお別れ。佐倉くんの後ろ姿が見えなくなってもしばらく、この場を離れることができなかった。ーー


ねぇ…無理だよ。


頭でたくさん考えても、
この”好き”って気持ちを
やめることができない。


紗英、ごめんね。
私、もう紗英のこと応援できない。