前の方の席、友達にからかわれて笑っている佐倉くんの姿。
たまたま振り返った時に目が合うと、私はうつむいた。
「ねぇ由梨、さっきのこと気にしないでいいから。」
「でも…」
「うちは恋愛のこととかよく分かんないけど、好きになろうと思って好きになったわけじゃないでしょ?」
「もちろんっ…気づいたら…好きになっちゃってた…」
「紗英は…ちょっと驚いただけだと思う。そりゃあ嫌かもしれないよ、取られちゃうかもって。でもさ、自分の気持ちに堂々としなよ。」
自分の関係ない話に巻き込まれてきっと動揺しているはずなのに、歩美はやさしく、そう言ってくれた。
少し遠くなった席から見る横顔は、あの頃とは別人みたいに見える。席だけじゃなくて、二人の距離まで遠くなってしまった気がした。
どうして、佐倉くんなんだろう。他にも男の子はたくさんいるのに、どうして…ーー

