ネットで得た情報だった。お相手は当時四十代後半の貿易会社社長。ついでにいうと峰岸さんは今、三十三才で瑛主くんより年上だ。
なーんだ、と今度は落胆する面々。ただの仕事相手と踏んだようだ。
「あんな美女が、俺らみたいな小さい会社の人間を相手するわけないよな」
「いや、一緒に酒飲むくらいいいんじゃね?」
想像で盛りあがれる彼らがうらやましい。
そして会話の勢いというものはあなどれない。本音がぽろりと漏れることもある。男性社員の片方が、はたとなにか思いついたように私に目を止めた。
「既婚ってことはバツイチ姫のジンクス再来?」
「え、私? なんでそこで私」
「なんでもなにも。姫里が組んでいるの、谷口主任だし。自覚ないの?」
「亭主と別れて谷口主任に行く、ってか?」
「ばか、声がでかいって!」
側頭部をぶん殴られた気分だった。そんな方向、思ってもみなかった。ただこの発言については、この場にいる唯一の既婚者である谷口さんが窘めてくれた。ふたりを引き合わせたんだし、もう行きましょうと言ってその場は丸く収まったのだけれど……。
翌日もその次の日も、峰岸さんは終業のころになると会社までやってきて、瑛主くんを待った。
あの人はなんなの、と瑛主くんを問いつめたかった。でも私はただの部下で恋人ではなく勝手に瑛主くんに想いを寄せているだけだ。聞ける立場になかった。それに嫉妬に駆られている今、自分でもなにを言いだすかわからない。
流れでうっかり告白などしようものなら最悪だ。出張のときの発言から、相手にされないのは目に見えている。
それでいて峰岸さんの姿を見かけると、世の中の憂鬱を一手に引き受けたくらい気が滅入った。視界に入るもの嫌で、あの人が立っていそうな時間帯には裏口から帰っているくらいだ。病気になりそう。


