「なにしてるの」
瑛主くんがやってきて私たちに声をかけた。そのまま帰れる格好だったので、てっきり峰岸さんを門前払いするものと思っていた私は嫌な予感がした。
「外にいる人が気になってしまって、主任が来てくれるのをみんなで待っていたんです。主任はこのあともうお帰りですか」
どこか非難するような口調になってしまったけれど、構っていられなかった。建物のまえで瑛主くんの在籍確認をしたというのなら、会う約束なんてなかったはず。峰岸さんは招かれざる客だ。相手をする必要なんてない。
ところが、だ。
「うん。じゃ、お先です」
瑛主くんはみんなに軽く会釈をして、するりと出ていった。峰岸さんが駆け寄るのが見えた。瑛主くんは峰岸さんを突き放したりはせず、そのまま隣にいさせた。ふたりは駅の方角へ消えていった。
はあー、と誰のものともつかないため息が聞こえた。
「マジかー。あんな美人と」
「雰囲気できあがってたな。言葉もいらない仲なのか」
「ため息しか出ねえ。あんな女とどこで知りあうんだ」
「谷口主任も堂々としていて、私たちに知られても平気そうだったものね。今頃、腕でも組ませてるんじゃないのー?」
「ちくしょう、ここにも組める腕あるのに!」
「腹立つ!」
腹が立つのは私も同じだった。言わずにはいられなかった。
「あの人、二年前に結婚していますよ」


