「読みふけってるし」
「結構おもしろいよ。エステ情報ばっかりかと思ったら、コンビニスイーツなんかの投稿もあって。庶民っぽい一面もある人なんだねー。私も読者になろうかなあ」
今回の出張は人や情報を得る目的だったので、私のアンテナはまだ解放されたままだ。峰岸さんのような人とパイプを持つことで、今後になにか役立つことがあるかもしれない。
「そのくらいにしとけよ。姫里は姫里だろ」
瑛主くんが私のスマホを手で遮る。
「読むくらいいいでしょ。それとも」
私が読むとまずいことでもあるの、と聞こうとした。でもそうならなかった。
瑛主くんは言った。
「ありさは元カノなんだ」
そのとき私はどう返事をしたのか、よく思い出せない。同じタイミングで、あるブログタイトルに目を止めていたからだ。
“ミント水”
嫌な予感がした。やめろという警鐘が自分のなかで鳴っていたけれど、どうしても見ずにはいられなかった。
初めて瑛主くんの部屋にあがらせてもらった日のことを思い出す。
『ミント水ならあるけど』
女子か、とあのときの私は心の内で笑っていた。