エースとprincess


 翌日は花の展覧会を見るだけだから気楽なものだった。写真撮影可能とのことで、式場に映えそうな花や目新しいものを片っ端からデジタルカメラに収めていく。途中で香りの強さも重要と思い立ち、メモを取った。時間内にまわりきるのはそう難しいことではないように思われた。
 わあっ、と女の人の声が背後から聞こえたのは、会場をほぼ一周したころだった。何事かと振り返ったら、そこにはとんでもない美女が立っていた。

 大きく見開きながらも笑みを湛えた瞳はこちらから目を反らすのが罪悪であるように感じられたし、白い肌と興奮でほんのり色づいた頬が愛らしい。耳や首筋がでるように緩くまとめられた髪は後ろだけおろしてある。そして同じ女として認めたくないけれど、豊かな胸に目を奪われてしまった。大きいだけでなく形もすばらしくて、下着なんてマナーで身につけているだけで本当はこの人には不要なんじゃないかと思えてしまう。
 手足も身体つきも細く、それでいて女性的な曲線を描いていて、こんな美の集大成のような人が世に存在していることが信じられなかった。ひとことで言うなら女神だ。


「瑛主くん、だよね? わあ、こんなところで会えるなんて思わなかった!」

 なんとこの女神様、瑛主くんと知り合いらしい。瑛主くんも驚愕しているようでなにも言えなくなっている。

「ちょっと、忘れちゃったとか言わないよね。なにかしゃべってよ」

 くすくす笑いながら女神はしなやかな動作で瑛主くんの肩に触れる。瞬間、私はかすかに嫌悪感を覚えた。


「忘れたわけじゃないけど、少し……驚いてしまって」
「久しぶりだものね。私もこんなところで会えるなんて思ってなかった。協賛メーカーとのおつき合いでたまたま顔を出したのだけど、今日来てよかった」

 今もあの会社にいるの、と親しげに話し続ける女神とは対称的に、瑛主くんは必要最低限のことしか返事をしない。今だって頷いただけだ。

「こちらは?」

 女神様、今度は私に注意を向けてきた。会社の部下、と短く言う瑛主くんに続き、私も名前を名乗る。名刺を渡していいんだろうか。伺うように瑛主くんを見ると、察してくれたようで軽く頷く。女神様も名刺をくれた。