エースとprincess


 ウェディングプランナーのしてきたことは白日の下に晒され、彼女は上司から厳重注意を受けた。配置換えの話もあったらしいけれど、そうなるまえに私のほうが希望して事務方に異動となった。確実な仕事ぶりが求められる場所を選んだのだ。
『君が打ち合わせをすっぽかしているという声があるらしいらしいが、本当か』
 あの日、一瞬でも職務放棄を疑われたことが悔しかった。そのときの上司は、大学を出ているから仕事ができる、高卒だからその程度、と典型的な学歴重視の人だった。それを知るや否や、高卒入社の私は奮起した。同期にも先輩にも負けない実績を残してきた。なのに、戦える場所をこんなふうに失くすなんて思いも寄らなかった。
 程なくして、件のウェディングプランナーの退職を知った。彼女は仕事を休みがちになっていて、見かねた上長による勧奨退職だったと聞いた。


「式を挙げたふたりが最後に大満足してくれたらそれでいいんだと思ってた。でも、ホテル側は一度決めた内容を反故にしてまで無理難題を叶えてくれたのだから、少なくとも私はプランナーさんにお詫びと感謝の気持ちを伝えなくてはいけなかったんだよね。だけど、当時の私にはできなかったし、そんな発想さえなくて。それどころか、本職のプランナーよりいいアドバイスができたとうぬぼれていて……」

 亀田すみれはそんな私のあれこれを知っているから、できれば顔を合わせたくなかった。いかにも仕事のできそうなあの人から、蔑みの視線も嘲りの声も向けられたくなかった。

「私ってば超恥ずかしいヤツだよ、まったくね、ははっ。……以上、報告終わりっ!」


 寝返りを打ち、瑛主くんに背を向ける。亀田さん以上に、瑛主くんには呆れられたくなくて、見放されたくなくて。
「ねえ、聞いてどう思った? 感想は?」
 黙っていられると嫌な想像に押しつぶされそうになるからこんなときは、頭の軽い女の子みたいにノリよく揺さぶりをかけてなにかしらの言葉、吐き出させようってなるよ。
 待てども待てども瑛主くんの返事はなくて、これは呆れられたか寝てしまったかのどちらかだと思いかけたそのとき、ようやく反応があった。周囲の空気を震わせて微かに笑う気配。