エースとprincess



 二十歳そこそこの新婚夫妻だった。私と年が近かったし、明るくくだけたノリの良さもあって、仕事とは思えないくらい楽しかった。古くからの友人ですか、と様子を見ていた顔見知りのホテルスタッフに聞かれたくらい、私たち三人は打ち解けていた。
 だから、本来花屋が足をつっこむべきでない領域にまで踏み込んでしまっていたことに、私は最後の最後まで気づかなかった。

 ウェディングプランナーと打ち合わせを重ねて決めた内容を新郎新婦が変えたいと言い出したのだそうだ。私と話をしたことで気が変わったらしい。
 当然、ホテル側は困惑した。会場のカーペットとカーテン、テーブルクロスの色調、お色直しの内容、極めつけは押さえていた会場そのものまでウェディングプランナーは変更を余儀なくされた。それでもそこはプロ、要望をすべて揃えて仕上げてきた。結果、新郎新婦の満足のいく挙式披露宴となった。

 ところが、話はこれだけで終わらなかった。私のDホテルでの仕事がうまくまわらなくなったのだ。
 顧客提案の不採用はやむを得ないとして、採否の返事がもらえる期日になっても連絡が来なかったり、プレゼンの日程連絡が当日にあったりと、それまでには考えられないようなことが立て続けに起きた。
 変だなあとは思ったけれどこういうことは選ばれる立場である以上、不可抗力だ。特別なことをなにもしなくても仕事がぱたぱた舞い込むときもあれば、なにをやっても相手に振られつづけることもある。今は辛抱のときなのかも、くらいに考えていた。

 もうすぐ一月というころに上司に呼ばれた。

『君が打ち合わせをすっぽかしているという声があるらしいらしいが、本当か』

 なにを言われているのか、意味がわからなかった。驚きすぎてすぐには返事ができなかった。私は約束のあったとおりに打ち合わせに行っているのにどうして?
 上司の知人が競合会社にいて、私の話を小耳に挟んだということだった。私の弁明を受け、上司があいだに入ってホテル側に確認を取ってくれた。


「私に仕事を妨害されたその人が、していたみたい。わざとぎりぎりに連絡するのとか、私にプレゼン日程を知らせなかったりとか。私に仕事をさせまいとしていたみたい」
 
「めちゃくちゃするな」
 黙って聞いていた瑛主くんが言う。
「どっちもどっちだけど」