エースとprincess


「なにを」

「この合コン。もうみんなに声かけたからって亀田に言われて、断りきれなかったけど、阻止すればよかった」

「出会わないのは瑛主くんの勝手だけど、人様の出会いを阻止する権限はないのでは」

「言うね」

 片手で肩を壁に押しつけられる。驚いて見あげたら、なんてことはない、通路を通る従業員の邪魔になっていただけだった。でも、その人がいなくなってからも、瑛主くんの手は私の肩に置かれたままになっている。
 この人、なにげなく私に触っているけど、まえに『触ってやらない』とかなんとか言ってなかったっけ? あの宣言はどこいった?


「じゃあ、もともと今日のセッティングを亀田に頼んだのが俺だった、って言ったら? 一度は頼んだものの、反応が芳しくないからやっぱりやめようとしたのに間に合わなかった、って言ったら?」

 なんだ? なにかがおかしい。合コン頼んだの、俺なんですか?
 肩に置かれた手が外される。それを機に私は額に手を当てて、俯き気味に考える。
 そもそも、彼女のいる人が合コンしたがるものなんだろうか。人数合わせや義理があって参加するのならともかく、こんな、企画しなければよかったみたいな言いかた……。


「えーと、違ってたらごめんなんだけど」

 首を傾げながら、おずおずと小さく手を挙げ、聞いてみる。

「瑛主くん。彼女いるって言ってたあれって、嘘なの?」