「だからってこっち来んな」
「いやー、安定の拒絶ですな」
所変わって、ここはナオのマンション。いつもなら挨拶しながら勝手にあがりこむところだ。ナオは在宅のときは決まって鍵をかけないので、それが可能なのだった。
玄関先で私は手土産の入ったビニール袋をあげてみせた。
「ほら、限定のあげポテト博多明太子味。好きでしょ」
「それはおまえだろ……ってゆーか、さ」
ナオにしては珍しく言葉を濁らせている。私の背後を気にしている。
「誰?」
「誰って、見てわかんない? 私の同僚……あれ、同僚だっけ?」
相当酔ってる、と私の後ろに立つ人物が言う。酔ってなんかない。ただふわふわしているだけ。そう言いたいのにうまく口が回らなくて、もういい黙ってろと言われて黙った。
あれれと思っているうちに後ろのその人、瑛主くんは説明をはじめた。自分は同期入社で最近異動で私の上司になったところで、今夜は仕事帰りに一緒に飲んでたとかなんとか。真面目かよ。
「真面目だよ」
「あれっ、ツッコミが声に出ちゃってた?」
「相談に乗ってやる、いい場所を知っているからいこうって、ずっとそればっかり繰り返していて……で、今に至ります」
ふんだ、ノコノコついてきたのはそっちじゃん。瑛主くんじゃん。それからさあ瑛主くん、さっきから私の肩に置いたままのこれ、この手はなんなの。


