エースとprincess


 幸いにもちょうど空いた席があってすぐに座ることができ、瑛主くんの思惑がなんであれ、少なくとも私のおなかは膨れた。焼き鳥はどれも絶品、鯛の兜焼きもたいらぎ貝のカルパッチョもたことアボカドのわさび醤油あえも冷やしトマトも鰹節のかかった豆腐サラダもみんなおいしくて、飲むほうよりも食べるほうが進んだ。ビールからわりとすぐに日本酒にしたからおなかへの収まりがよかったのかも。

「瑛主くんどうしよう!? このおにぎり、たらことチーズが入ってる!! しかもたらこは半生!」

「ああ。……よかったね」

「おにぎりだよ? おにぎり頼んでさ、フツー、こんなの出てくるとは思わないじゃない……あっ、胡椒が効いてる! おいしい! おいしいっ!」


 後ろのほうのテーブル席から、あ、じゃあおにぎりもー、と注文する女の子の声が聞こえて、はたと我に返る。はしゃぎすぎた……。
 今気づいたけど、瑛主くんも顔を背けて肩を震わせている。笑いをかみ殺している、みたいな?

「止めてよ」
「止める必要ないだろ。どこまで突っ走るか、見ていて楽しい」


 亀田さんの話題にはならなかった。場所を変えたらもう完全に喋る気がなくなっていたし、なにより食べるのが忙しかった。
 瑛主くんも無理に話を戻そうとはしなかった。そういうところはとてもいいと思った。
 なのに、だ。

「本当に誰ともつきあっていないの?」

 そんなことをこのタイミングで聞くとか、どうなの。次のひとくちに行く手が止まったじゃないの。とてもいいとか、こっそり評価した直後にこういうことを聞くってさ。私じゃなくたって動揺するよ。

「いるんだ?」