数年がかりで詐欺にあった気分だ。歌の苦手な私が自分を犠牲にするようにして、さらさなくていい恥をさらしていたという真実……。新入社員時代の私が可哀想だ。どういう洗礼だよ!
グラスを持たされて乾杯をしても、騙された感が拭いされなくて、なかなか口にすることができなかった。
そんな私のことなど意に介さず、瑛主くんはタルトを切りわけていた。台の生地が切りづらいようだ。あれっと言いながら四苦八苦している。
「貸して。私がやる」
*
「今日は送ってくれなくていいよ。泊めてくれるんでしょ?」
昼間着ていた服はタルトを食べているあいだに洗濯が済んでいた。乾燥機を使えば今日のうちには帰れる。
お風呂上がりに私はあきちゃんからのプレゼントのパジャマを身につけている。マンションに着くなり瑛主くんから手渡された紙袋に入っていたものだ。
紙袋はあきちゃんと買い物をしたときのものだった。なるほど、いつか会社で見かけた両人の密談はこういうことだったのか。
タルトの残りを冷蔵庫にしまい、使った食器を洗う。
「気になっていたんだけど、芸能事務所の知り合いってどういうつてだ? 峰岸ありさに渡した名刺はどこから出てきた」
ソファから瑛主くんの声がする。
私が『泊めてくれるでしょう?』って悪ふざけっぽく言ったのは無視された。
片づけが済んだらどこに行けばいいんだろう。ソファに戻る? それとも帰り支度をするのが正解? パジャマまで着たのに。
グラスを持たされて乾杯をしても、騙された感が拭いされなくて、なかなか口にすることができなかった。
そんな私のことなど意に介さず、瑛主くんはタルトを切りわけていた。台の生地が切りづらいようだ。あれっと言いながら四苦八苦している。
「貸して。私がやる」
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「今日は送ってくれなくていいよ。泊めてくれるんでしょ?」
昼間着ていた服はタルトを食べているあいだに洗濯が済んでいた。乾燥機を使えば今日のうちには帰れる。
お風呂上がりに私はあきちゃんからのプレゼントのパジャマを身につけている。マンションに着くなり瑛主くんから手渡された紙袋に入っていたものだ。
紙袋はあきちゃんと買い物をしたときのものだった。なるほど、いつか会社で見かけた両人の密談はこういうことだったのか。
タルトの残りを冷蔵庫にしまい、使った食器を洗う。
「気になっていたんだけど、芸能事務所の知り合いってどういうつてだ? 峰岸ありさに渡した名刺はどこから出てきた」
ソファから瑛主くんの声がする。
私が『泊めてくれるでしょう?』って悪ふざけっぽく言ったのは無視された。
片づけが済んだらどこに行けばいいんだろう。ソファに戻る? それとも帰り支度をするのが正解? パジャマまで着たのに。


