二十時半にフェスは終了した。人の流れに沿って私と瑛主くんも駅の方向へのろのろ進んでいた。
「暑かったねー。汗だくだく」
「だくだくって、他に言いかた……牛丼かよ」
昼間の熱気がまだ残っていて、生温かい風がほろ酔いの頬を撫でていく。
「素晴らしかった。私の好きなアーティストと同時期にヒット曲を飛ばしてたあのバンドが思いがけずよかったし、生涯で一度は聴いておきたかったあの人の生歌も聴けたし! うっかりCD買うところだったわ」
「楽しめたみたいでよかったね」
瑛主くんがさらりと言う。
「本当だよ。来てよかった。私、今、世界中の人にありがとうって言いたい。走り出したい。有り余るパッション、どうしたらいい!?」
「うん、わかった、わかったから」
興奮が醒めず、私は熱を発散させたくて仕方がなかった。瑛主くんはなだめるというよりはおもしろいものを観察するような目で私を眺めている。行きとは違い、帰りの電車は人でごった返していた。
「このあと、俺んちまで来られる? フルーツタルトがあるよ」
断る理由はなかった。


