エースとprincess


 どういう態度を取ればいいのかと当惑していると、瑛主くんが私を見おろしていた。目が合い、ふっと笑った。でもなにも言わない。
 そわそわどぎまぎ、でも嫌じゃないという、ややこしい感情に支配されているのは私だけかと思ったら、少し悔しくなった。


「余裕ですね」

「実はそうでもなかったりして」
 
 軽く睨む私を引き寄せ、瑛主くんは胸の音を聞かせようとする。速いような、そうでもないような……。

「よくわかんない」

 それより、身体がくっつきすぎて逆にこっちがどきどきする。

「これでもわからない?」 
 
 今度ははっきり抱き寄せられた。くっつくどころの騒ぎじゃない。瑛主くんの胸に顔が密着していた。
 ちょっとやそっとでは逃れられない強い力でぎゅっとされていて、私の物ではない柔軟剤の香りがほのかにして、くらくらする。

「わかった、わかったから離して。こっちの身が持たない……!」

 よく言うよ、と言いつつも瑛主くんは私を解放した。ただし私の手は繋ぎなおしたままだ。

 入場ゲートを抜け、私たちも大勢の観客と同じように芝生にレジャーシートを広げて場所取りをした。日差しを遮るものはなく、夕方と呼べる時間に差し掛かってもまだ暑かった。
 出店も多数並んでいて、食事はもちろんアルコール類も充実している。飲んだり食べたりしながら音楽を楽しめる形式だった
 夕食にはまだ早かったので、まずはジェラートやかき氷を食べながら開演のときを待った。