エースとprincess

 
 迎えた土曜日は快晴だった。
 瑛主くんとは午後に地元の駅で待ち合わせをし、電車をいくつか乗り継いで野外フェスの会場へと向かった。
 背の高い建物が乱立する駅から離れ、ベイサイドエリアに差し掛かると潮風を感じるようになった。
 瑛主くんはスキッパーシャツに黒の帽子とパンツ、足元はスニーカーだ。
 私もワンピースのうえに日焼け防止でシャツを羽織ってきた。靴はスニーカーで、瑛主くんが今履いているのと同じブランドだった。

「お揃いだ」

 スニーカーの件に触れるか触れまいか、迷っている隙に瑛主くんに先を越された。そうすると途端に冷めたコメントを繰り出したくなるわけで。

「心配しなくても巷に大勢いますから」

「型番も一緒?」

「うん、だから売れ筋商品なんじゃないですかねー」

 言い放った直後、左の手を握られた。

 息を飲んだ。
 心臓がひっくり返るかと思った。

 人が群のように会場のある方向へ流れているのに、目に入っているのに、突然私と瑛主くんだけが切り取られた現実のなかにいるみたいな不思議な感覚に襲われた。
 しかと繋がれた手は瑛主くんの意思そのものだった。繋ぎたいから繋いでいるんだと、突きつけていた。
 私の意識を引き寄せて離さない。瑛主くんのことしか考えられない……。