あきちゃんは周囲を伺ったあと、スマホを取り出して少しいじった。直後に私のバッグのなかでメッセージ着信を知らせる音が数回した。
『今なにしてる?』
『特に用とかじゃないんだけど』
『ちょっと相手して』
『構って』
イラストつきの短文メッセージの数々は、今あきちゃんが私に送ってきたものだった。
こういうのを送れ、と?
「初々しいふたりだからできることってあるよね。熟年カップルがやったらウザいだけだよ」
そう言うと、あきちゃんは何かを思い出したように疲れた目をして薄く笑った。
就寝まえに瑛主くん宛のメッセージを作ってみた。
『あきちゃんにパジャマ買ってもらいました』
『土曜日、楽しみです』
送る踏ん切りはつかなかった。衝動のままに、とあきちゃんは言っていたけれど、私には衝動がなかったからだ。もし送るならこんな感じかな、と仮定して無難に打ってみただけだ。それも書いては消し、書いては消しを繰り返して。
スマホを握りしめたまま寝てしまったようで、翌朝になって驚いた。メッセージは送信されていた。うっかりボタンを押したみたい。返信も来ている。
『俺も楽しみ』
『土曜日もパジャマも』
恥ずかしさのあまり、枕に顔を埋めた。スマホをベッドのうえで遠くに押しやる。
こんなこと言われて、職場でどんな顔をすればいい?


