「どういうこと」

 予感はあった。ぎゅーっとしたくなるとか、見せる人を選べとか——それって直訳すると、ぎゅーっとしてほしい人に見せろって意味にとれるよね。
 そう言ったら隣を歩くあきちゃんはきらきらした目で虚空を見あげた。図星。

「そう、一足さきにこのプレゼントは恋人の部屋で待つことになるの。甘い甘い、めくるめくひとときが訪れるのをね」

 話が見えてきた。

「そういえば会社で瑛主くんとあきちゃん、密会してたことあったね。あのときにそういう話をしてたってことか。ふーん」
「主任さん、強引そうに見えて案外慎重だよね」

 山田さんのことも、ありささんの旦那様である峰岸社長も味方につけてきた瑛主くんだから、あきちゃんまで取り込んだとしても不思議はなかった。
 でもあきちゃんは友達だから、私が嫌がるような加勢はしないだろうと思った。そうなると一番いい形で恋が進んでいきそうで、うまくいく気しかしなかった。
 駅のホームに降り立つ。次の電車がすぐに入るアナウンスがあった。

「あきちゃん。私、あの人のこと好きなんだ」

 無性に瑛主くんの声が聞きたくなった。まだ残務整理で会社にいるはずだ。

「そうだろうと思ってた」

 あきちゃんは言った。電話してみたら、と見透かしたようなことを言われて首を横に振る。電車は帰宅ラッシュが落ち着いてどちらか片方が座れるくらいの混み具合だった。
 荷物のあるあきちゃんに席を譲り、まえに立つ。

「どのみち土曜は一緒に出かけるんだし」

「今は衝動のままに行動を起こしていい時期なんじゃない?」

「どうしてそう思うの」