エースとprincess


 そのあと、峰岸さんの籠城していた部屋を片づけることになった。峰岸さんの持ってきたスーツケースに詰められるだけ詰め、残りは紙袋などに入れておいて、峰岸氏が人をまわして後日回収する手筈になっているのだとか。
 私も手伝うつもりだったのに、その必要全くなし、と瑛主くんはおろか山田さんにまで拒まれた。

「過去の女の後始末を君にさせるとか、どういうデリカシーのなさだよ」 不機嫌そうに毒づいて山田さんが一足先に室内へ入っていった。廊下に残るは瑛主くんと私のふたりだけ。

「念のため盗聴器が付けられてないかまで調べると言ってくれたけど、さすがにそんなことはしないだろうと断ったよ」

「そう」


 私はまだヘアドライヤーの入った量販店の紙袋を下げていた。別れ際に峰岸さんに渡そうとして、突き返されたものだ。あなたはもう少し自分の見た目に手を入れないと、と言われた。何様、と感じさせる態度は最後まで揺るがなかったな、あの人。

「これ、ドライヤー。瑛主くん家のが壊れちゃったんだって。さっき一緒に買ってきたの」

 私がもらうのも違う気がして、瑛主くんに受け取ってもらおうと小さな嘘も混ぜて手渡した。

「珍しい。なんでもネットで買うヤツだったのに」

 瑛主くんは紙袋からそっと視線を外す。

「寂しかったというのは本当なのかもしれないな」

それがわかったとしても、愛すべき一面があることを知っても、私にはこれ以上どうすることもできないし、もうその必要はない。規格破りの峰岸さんだとしても、あの心の広そうな旦那様がすべて受け止めるはずだ。


「……帰るね」

「待って」