「困るって言うけど、あなたはどうなの姫里さん。あなたもその、困るうちのひとり?」
「困ります。大困りです!」
「困る理由は……姫里さんから聞くまでもないね」
ふんわりとほどけるような微笑みを峰岸さんはこぼすと、んーっと言いながら今までの視線の攻防はなんだったのかと思うようなリラックスした様子で両腕をあげて大きく伸びをした。
「困るってはっきり言われたの初めてかも。ちょっと新鮮」
そして斜に構えた角度からにこりといたずらっぽく笑いかける。
うわっと声に出しそうになった。私が男だったら間違いなく落ちてる。惚れてる。こんなの見せられたら誰もが惚れ込んでしまう。ここにきて一番のかわいい微笑みだった。
今ここに瑛主くんがいなくてよかった。それでなくても昔の恋人だ。再燃したっておかしくない。
ひっそり胸を撫でおろしたそのとき、私でも峰岸さんでもない声が廊下に響いた。
「話は終わり?」


