ごまかされるかと思ったら、意外にも話してもらえた。それは、私という人間が、峰岸さんの敵としてはあまりにも弱い存在だと、相手にするほどじゃないと思われているからに違いなかった。
「私ね、今、谷口くんのベッドも服も自由にできるんだ。彼のシーツを乱して、きわどいランジェリー姿の私が横たわって、雰囲気のある写真でも撮ったらおもしろいかなって思ったの。谷口くんの服も脱ぎ散らかしたように端に写し入れて、彼の気配をちゃんと残して、ね。見た人はそこでなにがあったか、嫌でも想像しちゃうような」
豊満な身体つきの峰岸さんだ。この人にベッドに誘われて断れる男性なんているはずがない。作り物だとしても、そんな人の夜を思わせる写真が存在したら、本当にあったことだとみんな信じてしまいそうだった。峰岸さん自身、そのことをよくわかっていた。
「写真を主人にも見せたいって言ったら、谷口くんは私から目が離せなくなるよね。私の主人に知られたら困るものね」
大人をぶん殴りたいと思ったのは初めてだ。いい加減にしてと罵りたかった。立場も恥も外聞もなくやってしまいたかったけどしないで済んだのは、私が暴れたところで瑛主くんのためにはならないとわかっているからだった。
「そんなことしないでください」
激しい憤りを押し鎮め、理性に変えて絞りだした。
「瑛主くんも困りますし、峰岸さんのご主人も困りますし、峰岸さんだって下手したら自分の家庭を損ないます。どうしてもやりたいというのなら、ビジネスとしてやってください。峰岸さんの周りにある善意や好意につけこんでわざわざ裏切るようなこと、しないで」
そこまで言ったことで峰岸さんはようやく私に興味を示したようだ。名前、なんて言ったっけ? とわずかに距離を詰め、冷たく冴えた目で私をしげしげと眺める。国宝級の美人に至近距離で凝視されるなんてそうそうあることではない。たじろいでしまいそうなのをどうにか堪え忍んだ。
「意外ね。暴力に訴えたり泣きわめいたりするかと思ったら、根性あるじゃない」
峰岸さんは観察の体で、私は警戒心全開で、少しのあいだお互いを見合った。


