エースとprincess


 その晩、サワダさん(仮)改め山田さんからスマホアプリにメッセージが届いた。本名がわかったのだから登録も改めなければ、とどうでもいいことを思いながら開く。


『ういっすー! お疲れ! 愛しのえーすくんといちゃこらできたかい!?』

 いたずらメールを貼りつけたような文面。そして平仮名が多くて読みにくい。うっかり音読しかけて慌てて口をつぐんだ。
 私のいるここ、自宅のリビング! 風呂あがりにアイスクリームもらったところ! 半径五メートル以内に母親!
 自室に引きあげ、恨みを込めて返信を送ったら、折り返しで電話がきた。

『谷口のことだから姫ちゃんに黙っていると思って、老婆心ながら電話しちゃいましたー。てへぺろ』

「うん、こっちもなるべくウザがらないよう努力するから、山田さんもウザさ半減で手短にしゃべってくれます? アイス溶けちゃう」

『ウザいウザいってひっどいなあ! 僕の話とアイスとどっちが……』「アイス。用件は?」

『食い気味に答えたね』

 はははっと軽さ全開で乗りよくしゃべっていた山田さんは、急にギアチェンジして、静かに誘うような声でこう言った。

『谷口と峰岸ありさが過去どんなふうにつきあっていたのか、知りたくない?』

 私は即答した。「別に知りたくないです」

『そっか、姫ちゃんはそういう考えかたができる人なのか。まあ僕も同感で、過去は過去って思う。そうなんだけどさあ、じゃあなんで今、峰岸さんは谷口のところに通ってるわけ? 久々に再会したくらいでどうしてこうなった!? って……思わない?』