美晴ちゃんは、そのことにびっくりしたように、下げていた視線を上げ清良君を見上げたと思うと、くるりと体の向きを変え、雨具かけの方に行き何事もなかったかのように上着を脱いでかけて、手洗いうがいをした。
ハンカチを忘れたようで、濡れた手を水を払うようにして左右にぶるぶるとしていた美晴ちゃんに、ハンカチを差し出した。
「はい。先生ので良かったら使って」
美晴ちゃんのちっちゃな手がぴたりと動きを止めて、ゆっくりとハンカチに近づいた。
遠慮がちに伸びてくる手は、なんだか心細そうで……。
私は畳んでいたハンカチを開き、美晴ちゃんの手をそれで包み込むようにしてぎゅうっと握った。
「美晴ちゃん、あのね、今日から図書室で折り紙教室することになったの。美晴ちゃん折り紙好きだよね?」
「……うん……」
ちっちゃい声だったけれど、言葉を返してくれたことに嬉しさを感じた私は、「じゃあ、戦いごっこ終わったら一緒に折り紙折ろう」と、美晴ちゃんの顔を覗き込むようにして話しかけた。
じっと私を見つめてくる美晴ちゃんの目は、私をまっすぐに見つめていた

