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3時半頃になって、学校の授業を終えた美晴ちゃんたちが児童館にぞろぞろとやってきた。
雪で埋まってしまった児童館の門から玄関までを、長靴で雪を漕ぎながら逞しくやってくる。
そんな逞しい子ども達の後ろを、両手で紙袋を抱きしめるように抱えた美晴ちゃんが俯きながらとぼとぼと歩いている。
玄関に入って来た美晴ちゃんに「美晴ちゃんこんにちは。寒くなかった?」と話しかけた。
美晴ちゃんは下を俯いたまま、ちょっぴりだけ首を縦に動かした。
本当にちょっぴりだけだけれど、反応があったことが嬉しかった。
美晴ちゃんは長靴の雪を、ちっちゃな手で撫でるようにして落としからそれを下駄箱に入れると、上着やランドセルを身に着けたままホールへと向かっていった。
美晴ちゃんが真っすぐに進んで行った先は、清良君のところだった。
そして、ピアノを弾いている清良君に、持っていた紙袋をずいっと差し出した。
清良君はピアノを弾いていた手を止めて、横にいた美晴ちゃんに体を向かい合わせてその紙袋を受け取った。
「俺に?なんだろ?」
清良君が中身を確かめると、中に入っていたのは昨日貸した着替えだったようで、それを見た清良君は、「早速持って来てくれたんだ。洗濯してくれたお母さんにありがとうだね。美晴ちゃんも持って来てくれてありがとう」と言って、美晴ちゃんの頭を優しく撫でた。

