「え?佐藤先生って彩音先輩の元カレの?」
「え?元カレ?」
「ちょっと千夏ちゃん!」
さらりと過去のことを出された私は、動揺して声を荒げてしまったあと、隣にいた清良君の顔をちらりと見た。
清良君は驚いたような表情で私をじっと見つめていたけれど、私はなんだか気まずくなってすぐに視線を逸らせてしまった。
「佐藤先生がどうしたの?」
「えっと……佐藤先生、美晴ちゃんの担任でしょ?美晴ちゃんのことで話をしたいって江渡館長に電話があったって。今日の夕方話をする予定になってるの」
「そうなんだ……しょうがないとはいえ、彩音先輩会うの嫌でしょ?大丈夫?」
「あー、大丈夫大丈夫。そのあたりは割り切って会うから」
私はそう言うと、「玄関掃除してきます」と言ってその場を離れた。
スプレーをいつもよりかけて、窓ガラスを力強く拭いた。
あの時のイライラが蘇ってきて、力を入れられずにはいられなかったのだ。

