「あ、ねえ美晴ちゃん!もうちょっとゆっくり折ってくれない?俺、全然追いつけないんだけど」
清良君のお願いは美晴ちゃんに叶えてもらうこともなく、時間だけが過ぎていき児童館ももう閉館するという時、美晴ちゃんのお母さんが迎えに来た。
グレーの会社の制服を来た美晴ちゃんのお母さんは、しっかりと化粧をしていて、隙がないといった雰囲気がある。
私の隣をランドセルを背負って歩く美晴ちゃんを見るなり、美晴ちゃんのお母さんの目つきが変わった。
「ちょっと美晴、あんたなんで着てる服が違うわけ?」
「あの、これには訳があって」
「先生は黙っててくれる?私、美晴と話してるから」
美晴ちゃんのお母さんは、玄関から身を乗り出して美晴ちゃんの腕をつかむと、自分の方へと力づくで引っ張った。
私は慌てて美晴ちゃんの隣に並んで身をかがめて美晴ちゃんの表情を見た。
美晴ちゃんは体を強張らせて下唇を噛んでいた。
どうしよう……肝心の江渡館長は電話中だし……でもここで余計に口を挟んだら、もしかしたら美晴ちゃんがもっと怒られるかもしれない。

