「お母様がお迎えにきたら、少し話してみましょう」
「……はい……あ、でも……」
「どうしたの?」
私は、素直に江渡館長の言葉に同意することはできなかった。
美晴ちゃんのお母さんは、お迎えの時くらいしか会ったことがないのだけれど、あまり印象は良くない。
仕事の関係でお迎えが夜の8時を回ってしまうのは仕方がない。
けれど、いつもそのイライラを美晴ちゃんにぶつけている。
疲れて眠そうな美晴ちゃんがゆっくり外の靴を履いているようなものなら「置いていくからね!」といって叫ぶ。
美晴ちゃんはいつも泣きそうな顔をしながらお母さんを追いかけて見上げて……だから、今回のことをすごく怒りそうな気がしたのだ。
「あの、話すのは良いのですが、あまり美晴ちゃんが怒られないようにしたくて……うまく伝えられるか自信がなくて……」
「私も一緒についているから大丈夫よ」
江渡館長は、私の肩にそっと自分の右手を置いてにっこりと微笑んだが、それでも私の不安は消えなかった。

