「ううん、ごめん……私も無理にとは言わない……」



そう答えるしかできなくて、私はお酒を一気に飲み干して「さて、眠くなってきたし、シャワー浴びて寝ようかな」とはぐらかすように立ち上がった。



「ごめんね、彩音さん」



そう言って俯いた清良君のトイプードルみたいな頭を見ていたら、私はついつい撫でたくなってしまって、そこにぽんと手を乗せて優しく撫でた。


言葉は何も出てこなかった。


それが私の答えだった。


頭を撫でていた私の手の上を包み込むようにして清良君のごつごつした右手がふんわりと重なった。


そして私の手をそのまま自分の手のひらの上に乗せて、私にその手を戻すように少し高いところに持ち上げると、「ありがとう」といつもの笑顔で微笑んだ。


それはお姫様の手を取る王子様みたいで、清良君に見上げられた私の心臓は、いつもよりも高く、力強く鼓動した。