「前にさ、長旅してると良いことばかりじゃないって言ってたけれど、こうして聞くと良いことの方が多かったんじゃない?」



「まあ、こうして思い返してみるとそうですね」



清良君のからっとした笑顔は、私も旅に出てみたいなと思ってしまうほど魅力的なものだった。



「引きこもりが好きな私でも、人にたくさん会ってみたいなって思ったよ。一人で色々なところに行ってみるっていいものだね」



「未知の場所に行くと、そこで出会う人が情報源だから、自然にそうなったっていうのもあるけれどね。旅する前は俺、基本的に人嫌いだったし」



「え?見えない」



「でしょ?俺も自分がこんなに変わるなんて思わなかったよ」



その言葉を言った清良君の表情は、さっきまでのからっとした表情ではなく、寂しげなものに変わっていた。

その顔は、あの時と全く同じだった。


『覚えてもらってて嬉しかった経験でもあるの?』と、児童館で私が質問した時と全く同じ……。