初めて会ったときは、髭がボーボーで、髪の毛なんかもぐしゃぐしゃで、いかにも計画性無しの適当な旅をしてきましたって感じのみすぼらしい感じだったのに。
意外性があるようなことばかりしているのに、旅が終わったらサラリーマンになるって言っちゃうようなところ。
本当の清良君はどれなのか。
そんなことを考えていたら、ピアノを弾いている笑顔の清良君がなんだか嘘くさいような感じがして急に寂しくなった私は、清良君に背を向けてその場を去った。
*
時休をもらい、買い出しをして家に戻ったけれど、清良君のことがもやもや頭から離れなくて、料理をする手が止まったり動いたりを繰り返していた。
ピアノを弾いてからの清良君のモテ具合は異常で、千夏ちゃんなんて仕事しながらずっと清良君を目で追っていった。
「はあ……これから二人が仲良く登場、するんだよなあ……」
そう思ったら、余計手に力が入らなくなってしまった。
その時、ガチャリという玄関の扉が開く音と同時に「ただいま」と言う清良君の声が聞こえた。
「お、おかえり!」

