「そうそう人助けというか、犬助けだよ、うん」
「そうなんだよね。俺、彩音さんにとってはトイプードル的な位置なんだ。ご主人様的な?その優しさに甘えて部屋を一つ借りて、春までの約束でいさせてもらってるんだ。俺、旅の資金も貯めたかったから本当に助かってるんだよね。そのおかげでこうして千夏ちゃんにも会えたわけだし。ね?」
清良君の言葉は千夏ちゃんの気持ちを知ってか知らずか……その言葉は破壊力抜群で、さっきまで怒っていたような表情をしていた千夏ちゃんの顔がゆるゆるっとゆるんでいくのが分かった。
私は心の中で『ナイス!』と叫んでいた。
そしてこの機を逃すものかと、「もし良かったらうちで飲む?お姉さんおごっちゃうぞ」と、千夏ちゃんの機嫌を取れるような言葉を剛速球で投げた。
「え!?いいんですか?」
「いいよいいよ。私も飲みたかったし」
「やったあ!今日でもいいんですか?」
「そうだね……そうしたら私一時間時休もらって帰って準備してるから、二人は仕事終わってからゆっくり家に来たらいいよ」
「わあい!彩音先輩ありがとう!今日の仕事頑張るぞ!」
千夏ちゃんは私をぎゅっと抱きしめて、いつもの恋の歌を歌いながらスキップして職員室に戻っていった。