こんな雪の日に無謀な人だと思っていたら、そのバイクと合羽男は静かに私の横に並んだとき、電車がゆっくりと減速するみたいに止まった。


合羽男はエンジンが切れたバイクのキーを必死に回してエンジンをかけようとするが、エンジンがつかない。



「やばい……燃料切れだ……」



合羽男はそう呟くと、ヘルメットのシールドをあげ、バイクのスタンドを下げ立ち上がると、「お姉さん!」と言って私を必死な目で見つめた。


そんな必死な目で見つめられると、ついついなんとかしたくなっちゃうんだよな。

というか、『お姉さん』って……もう私32歳だっていうのに、ちょっと嬉しくなっちゃうじゃないか。



「あの、ガソリンスタンドならちょっと歩いたところにありますよ?案内しましょうか?」



「いえ、それは無理です!」



「え?どうして?」



「お金ないから……俺、すっからかんなんです!」



「は!?」



合羽男はそう言うと、ヘルメットを脱いで私に頭を下げた。