「怒られるよ?」
「大丈夫ですって!甲本さんめっちゃ集中してましたもん」
「うーん……」
私は、千夏ちゃんと同じように玄関の小窓から甲本さんの様子を覗き込み、掃除用具ロッカーの中から窓拭き用の洗剤と乾いた布を取り出すと、玄関の自動ドアの窓ガラスを拭きながら「ちょっとだけだよ」と、千夏ちゃんに答えた。
「清良君とはね、昨日会ったばかりなの。困ってたところを助けたのがきっかけでね。仕事探してたみたいだから紹介したの」
「へえ、そうなんですか!他に知ってる情報はあります!?」
「情報って言っても……25歳、っていうのは聞いたな」
「他には!?」
「え?他?ううん……」
昨日は、疲れてたせいか清良君早く寝ちゃったしな。
私がそんなことを思いながら首をかしげていると、千夏ちゃんが「そんなもんですか」と、明らかに残念そうに呟き、ふうっと軽くため息をついた。
でもそれも一瞬で、千夏ちゃんは急にスイッチが入ったように床を一気に磨き上げると、「……まあ、他のは自分で聞いてみますっ!ようし!超やる気出てきたー!」と叫びながら立ち上がった。
千夏ちゃんは、「よしっ!」と、試合で勝った時のように両手でガッツポーズをして、最近流行っている女性歌手の歌詞が分かりやすい恋の歌の鼻歌を歌いながら、次の作業へ移っていった。

