「バイクで旅に出るときに、親父……いえ、父が言っていたんです。人の縁を一番大事にしなさいって」



そう答える清良君の表情は、なんだか逞しくてきらきら見えて、今までの可愛らしい表情とは一変したような……そんな気がした。



「そう……ここは私が個人で経営しているところだから、特に書類とかは必要ないのだけれど、身分を証明できるものだけでも見せてもらっていいかしら?」



「はい!」



清良君は立ち上がると、ジーンズのポケットの中から財布を取り出して、その中から免許証を取り出し江渡館長に渡した。



「では、仕事の内容を説明します。高橋さん、あなたはいつも通りの仕事をお願いね」



「はい。分かりました」



私は清良君に「良かったね」と一言伝えて、館長室から出た。



私が館長室から出て隣の職員席に座ると、甲本さんと、今年の春、新卒で入っできた後輩の千夏(ちなつ)ちゃんが、磁石に引き付けられるみたいに私にひっついてきた。



「彩音先輩!誰です?あのイケメンは!?超タイプなんですけど!」



千夏ちゃんのつけまつげが嬉しそうに揺れる。