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清良君が帰ってきてから時はあっという間に過ぎ、町にあった雪も消え始めた3月の終わり、児童館で清良君のお別れ会が開かれることになった。
清良君のピアノに合わせてみんなで歌を歌ったりゲームをしたりして楽しんだ。
清良君にピアノを習った女の子達は、花束贈呈した瞬間に声をあげて泣いてしまった。
そんな女の子達をなだめながら、清良君はみんなに最後の言葉としてスピーチをすることになった。
慣れたように気を付けをしてぴたっと止まり、ホールに集まった子ども達と私たち職員を端から端までゆっくり見渡しながら笑うと、とってもきれいなお辞儀をした。
「みなさん。今日は僕のために素敵な会を開いてくださりありがとうございました。僕は4月からみなさんとは別な場所で新しいスタートを切ることになりました。ここに来て、たくさんの小さなお友達ができたことを僕は忘れません。今までありがとうございました」
短いスピーチだったけれど、子ども達にも伝わるような優しい言葉で、みんなのことを考えられる清良君らしいスピーチだったと思った。
子ども達とお別れをし、職員室でのあいさつも終え二人で児童館を出た。
江渡館長が玄関まで出てきて、清良君に紙袋を渡した。
「これは?」
「清良先生がここで使ったエプロン。せっかくだから記念に」
「ありがとうございます、嬉しいです」
「縁があってこうして一緒に働けて良かったわ。またお会いする時も変わらない今の笑顔のままでいてちょうだいね」
江渡館長は両手で清良君の手を包むと、優しく清良君の手を握った。

