自分が認識していた「帰る」と清良君が認識している「帰る」のずれを、記憶をもとに検証することにした。

清良君は自分の荷物を「すべて持って」私の部屋を出た。

そして、バイクは「落ち着いたら取りに来るから」と言って置いていった。

私は以上から、清良君が言っている「帰る」とは、「ただいま」のない「帰る」だと思っていたのだけれど、一体これはどういうことなのだろうか……。


新年会を終えた帰り道、清良君を問いただした。



「私のこと騙してたの!?」



「違う違う!俺は本当に帰るつもりだったんだけれど、親父が、仕事契約したからにはやり遂げで帰ってこいって……ま、それもそうだよなって思って戻ってきちゃった」



「戻ってきちゃった、じゃないよ!私はもう戻ってこないと思って……っ……!」



「ごっごめん!サプライズで帰ったら喜ぶかなと思ってて……泣かせるつもりじゃなかったんだ」



そう言って綺麗な皺ひとつないジャケットから、皺ひとつない綺麗なハンカチを取り出した清良君は、私の涙を優しく拭いてくれた。


そういえば……

私は、歩みを止めて、清良君の頭のてっぺんからつま先までゆっくりと観察を始めた。