「清良君は今、トイプードル。犬語だから何を言っても許されるよ。本音聞かせてよ?」



「彩音さんといたいからこっちいたいっていうのは本当だよ?でも正直、継がなくてすむのならラッキーかもって考えちゃったのはある。だって、社長だよ?俺、親父みたいになんでもできる器用な性格じゃないし」



「なんでもできなくてもいいじゃん。一つ特技あるだけでも十分武器だよ」



「……親父は、ドーベルマンみたいなんだよね」



「いいじゃんトイプードルも。可愛くて世渡り上手って感じだし」



「コーヒーブラックで飲めない」



「いいじゃん飲めなくても!どっちかっていうとお酒飲める方が大事じゃない?……てかさ、後半の方関係ないんじゃない?調子にのってからかってるでしょ?」



「うん」



そう言って照れ笑いを浮かべながら顔を上げた清良君に、私は続けてこう言った。



「今私に言ったの。お父さんにも話してみなよ」



その言葉を聞いた清良君は笑っていた顔をゆっくりと真顔に戻すと「また帰って来るから」と言って、私の手をぎゅっと握った。



そして私を自分の方へ引き寄せると同時に、私の唇に優しくキスを落とした。