*
いつも一緒に乗る電車。
いつもなら10分間があっという間に感じられるのに、今日は沈黙のせいか長く感じた。
今日の私たちは、初対面の人でも出来る決まり切った挨拶しか交わしてなかった。
気まずいとは思わなかった。
今この状態で言葉を交わしたら、清良君が何を言ったとしても私は「帰れ」としか言えないだろうから、むしろこの沈黙がありがたかった。
いつものように雪で狭くなった道を、清良君の背中を見ながら歩いた。
この背中を見るのも3月まで。
雪が消えて梅が咲き始める頃には、もう清良君はここにいないんだ。
――――――先輩!
「彩音先輩!」
呼ばれた名前に反応して気づくと、隣には水が出る蛇口を締める千夏ちゃんがいた。
「バケツから水溢れてますよ?どうしたんですかぼうっとして」
「ごめん、ちょっと考え事してた」
私はバケツからあふれ出した水を半分排水溝に流し持ち上げると、それを持って玄関へ向かった。

