『息子は私に、後は継がないと言っています。これは今日聞いた話です』



「後は継がない?」



『……高橋さん、大蔵商事はご存知ですか?』



大蔵商事。確か食料品の輸出入がメインの会社だけれど建設とか不動産業、保険とかも手掛ける大きな会社だ。



「はい」



『息子はそこの社長の息子です』



「え!?」



ということはつまり……今電話しているのは大蔵商事の社長さんで、清良君は跡取り息子!?

あまりの展開の大きな話に、私はついていけなくなった。



『とにかく一度帰って来るようにと伝えてください。息子はあなたを信頼しているようだし……では、仕事がありますので失礼致します』



プツリと静かに切れた電話。

いつのまにかベッドの上に正座をしていた私は、電話を持っていた手をだらりと太ももの上に垂らした。