ふわっと広がるコーヒーの香りを、深呼吸して体の中に入れ、どきどきを落ち着かせた。



「……あの、今日って何か予定入ってる?」



「俺は特に。お金もそんなにないし、本でも読もうかなあって」



「そっか……」



「え?何?」



「うん、えっとね、良かったらなんだけれど……」



湿ったコーヒーの粉の中心に「の」の字を書くようにお湯を注ぎながら、言葉をゆっくりと繋いだ。



「昨日のお礼もしたいし、清良君の好きな物ご馳走したいなって思っていたんだけれど、どうかな?」



「え!?それってデート!?」



「まあ、そうなるのかな」



清良君の分かりやすい笑顔に、自然と自分の顔もほころんだ。