「とりあえず、私だったら自分の好きなものは知っておいて欲しいよね……」



電気ケトルに二杯分のコーヒーの水を入れ沸かしながら、ふとそんなことを呟く。

ブラックコーヒーが苦くて飲めない清良君。

いつかブラックの良さも知ってほしいなあ。

そんなことを自然と思う自分に、はっとする。

私、清良君とずっと一緒にいたいなと思ってる……。



「どうしたの、ぼんやりして?コーヒー淹れないの?」



気づかないうちに清良君が隣にいたことに驚いた私は、体がびくっと動いてしまい、コーヒーの粉専用の計量スプーンに山盛りに持ったコーヒーの粉を少しだけこぼしてしまった。



「ごめん、驚かせた」



布巾を手に取り、粉をつまむようにして取りのぞいた清良君は、申し訳なさそうにその布巾を水で洗った。



「私こそごめん。寝起きでぼうっとしてた」



ドリッパーにセットしたペーパーフィルターにコーヒーの粉を落とし、ケトルのお湯を粉が湿る程度に注いだ。