私は若干あやしげな足取りでブランコに近づいて行った。
これはもしやお酒がまわってきたのか…?

自慢じゃないけど今までこんなペースでお酒を飲む機会はほとんどなかったから、どれくらい飲めば自分がどうなるか、なんて一切分かってない。

そんなことを考えているうちに彼の座っているブランコの隣に到着した。
さすがに彼もこの距離で気づかない訳はなくこちらに視線を向ける。

瞳が…見えた。彼の。

帽子の影になりはっきりではないけど初めて彼の顔つき、表情を見ることができた。

その表情は……思いっきり訝しげって感じ…。

何よ!自分だって十分怪しいっつうの!

「今晩は。」大人として一応の挨拶。
「こんばんわ。」
お、返事した。声は思ったよりちょっと高めなんだ。暗いから良く見えないけどやっぱり想像していた通りイケメンって感じ。で、何故かエロい…。

「…。」私の考えをよそにその彼は帽子の下から隣のブランコに腰かけた私を伺うようにじっと見ている…気がした。

何見てるんだろ?深夜の酔っぱらいが珍しい?痛い女だな~って考えてるの?
公園はみんなのもの!イケメンのものじゃないの!
大体昼間も深夜も公園にいる自分の方がかなり痛いっつうの!
そんなのニートか変質者でしょ!もしくはどっちも!
何見てるの?何か言いたいなら言えばいいじゃん!このエロイケメン!

「…プッ!アハハハ!」
突然彼が笑いだす。

何?この人ヤバイ人なの?
クスリとかやってる?
残念イケメン?

「アハハハ!…ねぇ、お姉さん、さっきから思考がただ漏れだよ!ハハッ!」

「?」

「頭の中で考えてるつもり?全部口に出してるよ、考えを!アハハッ!エロイケメンなんて初めて言われたわ~。」
目の前で苦しそうに笑うイケメンを見てスーっと酔いが冷めた。

いや、スイッチが入ったんだと思う。一番ヤバイやつが。

「~っ!何よ!本当のことでしょ!イケメンだからって自分中心に世界が回ってると思ってんじゃないわよ!そういう勘違いイケメンがいるせいで私たち庶民は何をやっても上手くいかないのよ!だから仕事だってミスするし、彼とも上手くいかなくなったんじゃない!」


死にたい。
と、後で思った。
完全に絡み酒で、というか本来なら絡むところもないのに力ずくで絡みに行ったというか…。そもそも隣に座った行動すら謎。


そしてここからが本当の山場。
飲むだけ飲んで絡むだけ絡んだら一気に気持ち悪くなって……まさかのリリース。(といっても水分だけだけどね!それがせめてもの救いだった、と自分を慰める…)
そんで出すもの出したら今度は仕事の疲れと連日の睡眠不足がどっと出てその場に座り込み意識を失うように…眠ってしまった。


これが彼との出会い。

チーン。