記憶は私に愛をくれない。

私はそれから渡辺ほのかという仲のいい友人のところにしばらくあずけられた。


陸は、どこに行ったか知らない。



あの日、たまたま近くを通ったほのかのお母さんに拾われた。


陸はもう、どこにいるかわからなかった。


私のお母さんとお父さんはやはり逃げ遅れて焼け焦げた遺体で見つかった。


なぜか涙は出なかった。


私には兄弟がいなかったからお父さんとお母さんがいなくなれば一人身なのに、


何故か実感がわかず、涙は一滴も出てこなかった。


それから私は新潟に棲むいとこの家にあずけられることになり、それまでずっと暮らしてきた仙台を離れた。


もちろん、あの火事の日から陸には、




一度も逢わずに。